成長期の栄養とバランスの良い食事の工夫
成長期のお子さんがいる家庭では、子供の栄養がちゃんと足りているか気になりますね。特に男の子は身長を大きくさせたい。女の子は肥満にさせたくないなどお母さんも考えて食事を作っているかと思います。しかし、成長期のお子さんが必要とする栄養素と必要量がどのくらいなのか、どの様な食品をどのくらい食べさせれば良いか気になると思います。特に成長期は、日々の食事に気を付けていたとしてもカルシウムやビタミンなど不足しがちな事がよくあります。必要な栄養素が十分にないと勉強のときに集中力が無かったり、部活動で活躍できなかったりしますし、逆に必要以上の栄養素を摂取すると肥満の原因になります。ここのページでは、成長期のお子さんに必要な栄養素が何か?どのくらい必要なのか?を中心にお子さんが安心して栄養補給できる方法を紹介します。成長期のお子さんがいるお母さんお父さんはチェックしてください。
まず、必要な栄養素について簡単に説明したいと思います。小学校などで配布される献立表に記載されている「赤・緑・黄」の表や図があるかと思います。非常に必要な栄養素を簡単に表現しているものの1つです。
- 赤グループは「たんぱく質」です。体そのものをつくる。骨、筋肉、髪の毛、脳、胃や腸の様々な臓器、各種ホルモンといった、体のすべてを構成するのに必要な栄養。
- 黄グループは「炭水化物・脂質」です。細胞が動くためのエネルギーを供給する。体温を産生し、筋肉や心臓や胃腸などの臓器を動かし、ホルモンなどを生成するための化学反応を起こすエネルギーのもととなる。
- 緑グループ「ビタミン・ミネラル類」赤グループや黄グループの食品が、胃腸で消化され様々な過程を経て栄養素に変化し、実際に体で役立つ形に変わっていく合成反応の触媒役。ビタミン・ミネラル類がないと食品が栄養素の形まで分解されて細胞に吸収されないし、エネルギーにも変換できない。
成長期の子供の3~4人に1人が「肥満(太り気味)」「痩せ(やせぎみ)」
成長期のお子さんの身体測定をすると「肥満」「太り気味」「やせ」「やせ気味」の小中学生が多く問題となっています。この背景には、飽食の時代(いつでも、どこでも食品を摂取できる、いわゆる空腹を感じる事がなく食べ過ぎ)運動不足、穀類からのエネルギー摂取ではなく油脂類からの割合が上昇しているなどがあります。この様な食生活の乱れが肥満体型となり、その状態が長く続くと糖尿病、脂質異常症(高脂血症)など生活習慣病の原因にもなります。
一方、肥満だけではなく「やせ」のお子さんも多いのも問題です。ある調査によりますと小学生の約4割にあたる37.1%が「やせ傾向」にあることがわかりました。この背景には、思春期に多く感じる「やせ」への願望があると考えられます。また、親の「食に関する知識の差」が影響しており、一見バランスのよさそうな夕食でも栄養バランスに偏りがあり、タミン類や鉄分・カルシウムなどのミネラル類が不足傾向にあるといいます。
(肥満と痩せの学年別割合%)
小学校高学年 | 中学生 | |||
男 | 女 | 男 | 女 | |
肥満 | 28.5 | 22.8 | 18.6 | 28.2 |
やせ | 13.5 | 24.6 | 33.8 | 16.6 |
現在、普通の体系の子供がへり、肥満、あるいは太り気味或いはやせ、やせぎみといった、体重異常の子供の割合が増えつつあり、それぞれが20~30%となり、全体の体重異常では40~60%となっています。
成長期における「肥満」や「痩せ」食事改善方法
現在の子供たちの問題の源は大人の食生活、生活習慣の乱れにあります子供は大人の写し鏡といわれるように、大人の背中を見て育っていきます。子供の問題を改善するためには、大人自身が生活習慣を改善することが先決です。食育ではぐくみたい「食」を営む力やマナーはむしろ大人が率先して身につけなければなりません。最大の予防方法は大人自ら生活習慣の改善を行うことにあります。子供たちに「食の適量」を教えるとき、子供は適量の格差が大きく、無理に食べさせることは逆効果となります。体が小さいから、早く大きくなるように食べさせることは子どもにとって大変なストレスです。もう食べられないのに食べさせてしまっては、個人の適量を無視し、食生活の乱れ、生活習慣の乱れの改善には決してつながりません。それどころか、無理な食によって肥満ややせはさらに深刻となります。
成長期のお子さんの基礎代謝を知りましょう
人間な生きるためにb必要なエネルギーの約70%は基礎代謝のためのものです。基礎代謝とは呼吸や血液循環、内臓の活動などの人間が生命を維持していくために最低限必要なエネルギーをいいます。エネルギーの内訳は 脳:19%、心臓:7%、筋肉:18%、肝臓:27%、腎臓:10%、その他:17% と言われています。基礎代謝の他は活動によるエネルギーのほか、消化吸収、代謝によるものや、成長期の子供にとっては成長に必要なエネルギーも必要となります。
男性 | 女性(妊婦、授乳婦を除く) | |||||
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年齢 | 基礎代謝 基準値 (kcal/kg/日) |
基準体重 (kg) |
基準体重での 基礎代謝量 (kcal/日) |
基礎代謝 基準値 (kcal/kg/日) |
基準体重 (kg) |
基準体重での 基礎代謝量 (kcal/日) |
1〜2 | 61.0 | 11.7 | 710 | 59.7 | 11.0 | 660 |
3〜5 | 54.8 | 16.2 | 890 | 52.2 | 16.2 | 850 |
6〜7 | 44.3 | 22.0 | 980 | 41.9 | 21.6 | 920 |
8〜9 | 40.8 | 27.5 | 1,120 | 38.3 | 27.2 | 1,040 |
10〜11 | 37.4 | 35.5 | 1,330 | 34.8 | 34.5 | 1,200 |
12〜14 | 31.0 | 48.0 | 1,490 | 29.6 | 46.0 | 1,360 |
15〜17 | 27.0 | 58.4 | 1,580 | 25.3 | 50.6 | 1,280 |
18〜29 | 24.0 | 63.0 | 1,510 | 22.1 | 50.6 | 1,120 |
30〜49 | 22.3 | 68.5 | 1,530 | 21.7 | 53.0 | 1,150 |
50〜69 | 21.5 | 65.0 | 1,400 | 20.7 | 53.6 | 1,110 |
70以上 | 21.5 | 59.7 | 1,280 | 20.7 | 49.0 | 1,01 |
摂取エネルギーとは食事により得られるエネルギーを示し、脂質:9kcal、タンパク質:4kcal、炭水化物:4kcalのエネルギーを1g当たり持っています。消費エネルギーとは、基礎代謝、身体活動、成長に必要なエネルギーです。そのバランスを逸したとき、肥満ややせが発生し、成長や将来の疾病に大きくかかわってきます。健全の体を維持するためには、摂取エネルギーと消費エネルギーが同等であることが必須となります。そのためには、自分自身がどの程度のエネルギーを消費していてどのくらいのエネルギーが必要なのかを知ることが大切です。
身体活動レベルについて
身体活動レベルとは、ある一定の条件をもとに算出した、指数です。基礎代謝に対してその指数を乗じた数字が一日の必要エネルギーとなります。
低い(Ⅰ) | 普通(Ⅱ) | 高い(Ⅲ) | |||
指数 | 1.5 | 1.75 | 2.0 | ||
内容 | 生活活動の大部分が座位などの静的で、身体活動が極めて低い。 | 座って仕事をすることが多いが移動、律鋳での通勤、家事、軽スポーツなども行う。 | 移動や立って仕事が多い。スポーツなどの運動を習慣化している。 |
摂取エネルギーの計算方法
一食分のエネルギー量にの適量は一日に必要なエネルギーの1/3が目安となります。一日に必要なエネルギー量は次の式で出すことができます。基礎代謝基準値×体重×身体活動レベル(+エネルギー備蓄量)もっと簡単な方法で食事摂取基準を用いることで、簡単に済ませることは可能ですが、成長の著しい子供においては体格差が大きく出てきます。そのため個人差が大きく生じやすくなりますので、個々の計算法で算出した摂取エネルギーを用いたほうがより正確です。間食の配分は忘れずに行います。目安としては一日の摂取エネルギーの約10%もし一日の摂取エネルギーが2000kcalであれば、2000kcal×0.1ですから200kcalということになります。その間食分をさしい引いたエネルギー1800kcalを3食に配分します。基本的に朝から食欲があまりない子供に関しては、少し少なめにしていただいて結構です。ただし、夕食に偏りすぎないように気をつけましょう。また、大人、子供に共通して言えることは主食によるエネルギー摂取は食事の50%を割り当てることが基本となります。
塾や部活動などにも配慮した栄養補給が重要
- a一日3食の食事が鉄則。エネルギー摂取基準が2500kcalを超える場合は補食を行うようにしましょう。
- 瞬発力を要する種目や球技は、トレーニング期において活動強度Ⅲに分類されます。これは基礎代謝量に対して2倍のエネルギーを要する強度です。さらに持久系では2.5倍ものエネルギーを要します。そのほかの種目やオフシーズンは活動強度Ⅱに分類されます。
- 激しいスポーツを支えるためには、バランスの良い食事はもちろん、炭水化物からエネルギーを確保することが大切です。炭水化物を有効的にエネルギーに変換するためにはビタミンを確保することが必須となります。
- 塾通いで気をつけなければならない点は、夕食が遅くなる傾向にあるということ。夜遅くの食事は肥満の原因となりますので、注意が必要です。もし、塾までの間に時間の余裕があるようでしたら、早めの食事を取らせてあげるようにしましょう。時間がない場合は、比較的吸収の早いバナナなどを食べさせましょう。頭を使うことは、スポーツ同様以外にエネルギーを要します。特に脳の栄養となる炭水化物をしっかり補給することが求められます。また、炭水化物を有効かつ速効的に利用するためにはビタミンの存在が重要となりますので、一日3食のバランスの良い食事を心がけましょう。空腹時の勉強はほとんど身に入りません。脳の栄養分である糖質が不足するため、活動を低下させるためです。しかし、食べすぎは肥満のもととなりますので、間食を取る場合は200kcalまでのデザートや果物に押さえておきましょう。
年齢別に必要な栄養量を詳しく説明
幼児(3~5歳)の適量食欲が旺盛となる時期であると共に、好き嫌いが出始める時期でもあります。そして、第一次反抗期でもありますので、強要に対して反抗する時期ですからさらに、好き嫌いを助長させてしまいます。大切なことは、子供の食欲に応じた「適量」を考え、さまざまなことを覚えられるよう調理法にも工夫が必要です。
小学生小学年(6、7歳)の適量この時期は親子の食事の嗜好が一致する時期であり、親が子供に合わせて食事をするのではなく、親の食事を子供に食べさせるという傾向が強くなる時期です。そのため、塩分、糖分、動物性たんぱく質などの取りすぎや、野菜嫌い、朝食抜きなどの偏食や食生活の乱れが現れます。大切なことは、親の食生活は子どもの食生活ということを認識し、食生活の変容を親自身から始めることです。
小学生中学年(8、9歳)の適量質の良い食事を3食きちんと取らなければ、栄養の偏りが成長に大きく影響する時期です。食欲も旺盛で何でも食べてしまう年齢でバランスの良い食事をしっかり食べて、しっかり運動をさせて骨格を発達させるようにしましょう。
小学生高学年(10、11歳)の適量身長が著しくのび、体重が増え始める時期です。10歳でエネルギータンパク質の摂取量が母親より多く、11歳ではタンパク質の摂取量が父親より多くなります。乳児期に次いで成長が盛んな時期で、第二次性徴期で学童期から思春期へと移行する時期でもあります。
中学生(12~14歳)の適量中学生(12から14歳)は、身長、体重、性機能など、一生のうちで最も成長が著しくなる時期です。当然この成長を支えるためにはバランスの良い質の良い食事が求められます。タンパク質の摂取量は30~40歳代の親より多く必要。
適量食のための傾向と対策
主食を適量に食べましょう
ダイエット願望が強くなると、炭水化物である主食を減らす傾向にあります。主食を減らし副菜であるサラダの量を増やしたとしても、そのエネルギーを補うことはできず、慢性的なエネルギー不足へと陥ります。対応としては、バランスの良い食事をとにかく習慣化させることにあります。こ主食、主菜、副菜がそろった食事をとることによる体調の変化を体感させる目的があります。主食の良い点は、塩味のきいた主菜や副菜があればおいしく食べられる点。しかし、それこそが、主食の取りすぎの原因です。そのためには、濃い味のおかずは控えて、薄味の副菜や汁物を充実させることで、食べすぎを防ぐことができます。
主菜を適量に食べましょう
不足する原因は様々。魚は骨が多いし生臭い。肉は脂肪が多すぎて気持ちが悪いなどなど。食べない原因はいくらだでも上がってくるもの。その一つ一つの原因に共通するものそれは、素材に合った調理法を行えば改善できるということ。ただし、濃い味にしてごまかすという方法は、主食の量が過剰となるため注意が必要です。卵、肉、魚など個々の適量は意外に少ないことがわかると思います。(年齢別適量を参照)量が少なくボリュームを保つことができないため、2人前、3人前と適量をはるかにオーバーした取り方となってしまいます。 そこで、卵、肉、魚の量はそのままに、トッピングの野菜の量を増やして嵩を多くするようにしましょう。おのずと、満足感が得られ、減らすことができます。
副菜を適量に食べましょう
副菜の不足
野菜の不足は、子供だけの問題ではなく、大人の問題でもあります。野菜の推奨量は350gそれだけの量をとるためには、やはり主菜との組み合わせが大事です。主菜の面積比で2倍程度の量は必要です。野菜を食べさせるために味でごまかす。或いは味をわからないように食べさせても意味がありません。味がわからないように食べさせるのではなく、おいしく食べられる料理法を選び、楽しんで食べられる環境を作り出すようにしましょう。副菜での過多の大きな問題は、ポテトチップやフリーズドライフードによる塩分、油分の量です。また、野菜の過多の問題ではありませんが、ダイエット目的とした野菜への偏りも大きな問題となっています。 できる限り、野菜をとる場合は、生鮮野菜を取るようにし、熱を加える場合も味を濃すぎないように素材の味を生かした料理を選ぶようにしましょう